-9/23(木・祝)に公開される『マイ・ダディ』。本作の台本を読んだ2時間後には「この世界にいたい」と思われたとお聞きしました。
僕は父親になったことはないけれど、信じていたものすべてが崩れ去ってしまった主人公の一男が、当たり前のように、病を患った娘のひかりのために奔走するところに惹かれたんです。なので、今回に関してはこれまでのムロツヨシのイメージや技術的な芝居はすべて捨てて、現場や共演者の方たちとの空気を大事にしながら臨みました。“何も用意しない演技”は初めてのアプローチだったので、最初は怖かったですけどね。
―本作では、いま言われたムロさんと多彩な共演者とのお芝居が大きな魅力になっています。
ヒロインのオーディションから参加させていただいていたので、ひかりを演じた中田乃愛さんとのお芝居はいろいろな意味で刺激的でした。特に、自暴自棄になったひかりをナンパしようとしていたチンピラたちから救い出し、抱きしめるところは、この作品のいちばん肝になるシーン。娘の悲しみと諦めの目を見て、一男の瞳も少し狂気を帯びてくるし、行動も変わっていきますから。そこはお芝居に関しても一緒で、中田さんもあそこは苦しんでいたので、僕は役者としてできる限りのことを彼女にしてあげようと思いました。
―亡くなった奥さん、江津子を演じられた奈緒さんとのシーンも微笑ましくて印象的でした。
奈緒さんとはすぐに打ち解けることができて、準備する時間は少なかったのですが、幸せな夫婦を演じることができました。彼女と一緒に、中田さんに誕生日プレゼントを贈ったこともありました。奈緒さんがうちに送ってくれた品物を僕が包装して(笑)。コロナ禍で撮影が去年の4月から12月に延びて、その間に役者としての喜びを共有できたのも大きかったですね。