― 映画「にがくてあまい」で、川口さんは容姿端麗のデキるOLでありながら家ではズボラな野菜嫌いのマキを、林さんは料理が大好きな菜食主義のゲイ・渚を演じられましたが、どんなことを心掛けられましたか?
川口:
会社と家とでギャップがあったほうがおもしろいだろうし、ガサツなところでさえ、かわいくなればいいなと思っていました。それに、抜けているところも含めて、それぐらいまでやらないと同年代の女子の共感が得られないし、そのほうがリアルのような気がしたんです。
林 :
川口さんにもマキちゃんと同じおもしろい瞬間とキュートな瞬間があって、ピッタリだなと思いました。マキちゃんのほうが感情を爆発させるけれど、マキちゃんと渚が言い合いをするドタバタシーンは楽しかったです。
川口:
マキがお父さん(中野英雄)の顔に向かって、口の中のビールをバーって吐き出すシーンも最高でしたね。ああいうシーンがあると、「やったー!」って思っちゃうんです(笑)。
林 :
僕は監督から「ゲイとベジタリアンの2点を突き詰めて演じてほしい」と厳しく言われたので、新宿二丁目で本物のゲイの方から話を聞いたんですけど、その人から最初に「私たちは扉を開けて入ってきた瞬間に、その人が本物か本物じゃないかわかるから」って言われたんです。それで人の話を聞く時の顔の角度や仕草、話し方、距離感など聞いてみないとわからない細かいことを教えてもらって、それを役に取り入れていきました。
川口:
だからなのかな。最初に会った時からゲイっぽくて、全然違和感がなかったです(笑)。
― ゴーヤの冷製茶碗蒸しを一緒に作るシーンで、2人の距離は一気に縮まりますね。
林 :
あそこはほとんど“素”だよね(笑)。
川口:
そう。いちばんテレがありました (笑)。
林 :
監督が「渚がマキに茶碗蒸しの作り方を教えるところを蒸す過程まで一気に長回しで撮るから、そこまで2人で自由に演じてほしい」って言われて…。
川口:
でもセリフも特にないから、少し恥ずかしくて、ドキドキしながらやってました(笑)。
― 共演の方々も魅力的な人たちばかりです。
林 :
渚の初恋の人でもあるアラタを演じられた淵上泰史さんはスゴかったです。いろいろな作品を観て、ヤバい人だなというのは分かっていたんですけど、アラタが寝ている渚に口づけをしてくるシーンでは、段取りから本気モードで。キスというよりも舐め回すぐらいの勢いだったから、嫌いになりそうでしたが、とても気持ちのいい人でした(笑)。
川口:
淵上さんはあのアラタという役が見事にハマっていておもしろかったです。でも、たぶん緻密に計算して演じられていたんだと思います。普段はそんなにしゃべるタイプではないだけに、アラタになった時のスイッチの入り具合が強烈で、スゴいな~と思いましたね。
林 :
渚と、真剣佑くんが演じた後輩“ばばっち”とのやりとりを、電話で聞いていたマキが勘違いするシーンも好きでしたね。
川口:
2人のシーンはめちゃくちゃウケました。真剣佑くんもゲイっぽい雰囲気を出していたから、生々しいな~と思ったし、おもしろかったですね。