― 今回のオファーを受けた時、率直にいかがでしたか? プレッシャーは感じましたか?
いや、それは大丈夫だったよ。僕はイギリス人でね。アリスの世界は幼少期から親しみがあったので熟知していると思っていたので、どのキャラクターが好きで、キャラクターをどうしたいかが最初にはっきりしていた。ただ、同時に大仕事になるということも認識していた。だから、アイデアに興奮するとともに、大仕事に不安にもなったよ。
― 原作やティム・バートンの特性を継承しながらも、タイムというキャラクターを広げるなど独自性も打ち出していますね。
前作のティム・バートンが作った世界観が基礎になっているけれど、その上で原作のジョン・テニエルの挿絵のようなビクトリア朝の雰囲気を採用した。だから、前作とは年代も地理も設定が変わっている。そしてルイス・キャロルの原作に頼るだけでなく、映画にもっとストーリーをつけることに注力した。その今回新たに登場するタイムというキャラクターも原作の一節からヒントを得て、後はイメージをふくらました。原作みたいにチェスのシーンもあったりするので、原作ファンの方々は感激すると思うよ。
― 撮影を終えて、大任をまっとうして、いかがでした?
日々、毎日が大変だったけれどね(笑)。この作品のテーマは“時間”であって、実際に長い時間をかけて作った作品になった。続編を撮る楽しみは、それぞれのキャラクターについて、もっと深く掘り下げて知れるっていうことだよね。それと、愛する人と過ごす時間は大切だって、この映画を観て気付いてくれたらうれしいよ。
― 映画館で映画を観る際、自分だけの楽しみ方、こだわりの鑑賞法などありますか?
座席だけれど、真ん中の真ん中、ど真ん中に座ることにしている(笑)。映像的にも音響的にも近すぎず、遠すぎず、一番そこがいいと思うからね。それに僕は、食事はしない。水だけだ。食べる音がうるさいからね(笑)。カシャカシャうるさいから、水だけなのさ!
― 映画館で映画を観る時、ひとりで観ますか? それとも大勢で鑑賞しますか?
僕はひとりで観る派だよ。仮に知っている人たちと行くと、その人たちのリアクションを至近距離で観ることになるので、それに影響されたり、感化されたりしてしまう場合があるのでね。映画鑑賞の素晴しい点は、まったく知らない他人同士のグループと一緒の空間で、ひとつの作品を鑑賞して楽しむことだ。その経験が特別なものなんだよ。
― たとえば今回の映画のようにシリーズの最新作を観る場合は、前作の再鑑賞などの予習をして観るタイプですか?
予習をしなくはないけれど、たとえば批評などはまったく目にしないで、まず映画を観たいタイプだね。まず映画を観て、その後で批評を観ている。何にも先入観を持たないほうが、純粋に内容を吸収できるからね。
― マッドハッター役を続投した、ジョニー・デップとの仕事はいかがでしたか?
素晴らしかったよ。ずっと彼の大ファンで、『エド・ウッド』は僕の大好きな映画のひとつで、ティム・バートンにしてもまたそうだった。だから彼の仕事や、役者としてのスキルはよく知っていた。そして彼は、このキャラクターのことを熟知していた。彼が前作で作り上げた傷つきやすいハッターという点も、とても興味深かったね。本作は彼を救うという内容だったので、冒頭でのハッターを失意の男として彼は演じている。その彼を助けてあげたいという想いが物語を先に進めていくわけで、これは素晴らしいと思ったよ。
― 続編の今回は、マッドハッターの知られざる一面も観たような気がして楽しかったです。
僕たちがジョニーと一緒に考えたことは、狂人にとって狂気とは何を意味するのだろう? ということだった。そこで考えた答えは、他の人が正気であることが狂人にとっての狂気、ということだった。だから今回、彼が初めて登場するシーンではスーツを着て、きちんと髪型を整え、まるでノーマルな人だ。もちろん悲しみに打ちひしがれ、すっかり弱ってしまっているので、完全にノーマルではないのだけれどね。そこが僕にとって興味深い点で、ジョニーにとってもそうだった。だから、その点を一緒に追求していったんだよ。
― 最後におうかがいしますが、今作で一番こだわったシーンはどこになるでしょう?
本作の中で中心となる関係のひとつは、ハッターとアリスだよね。だから、何年かぶりにふたりが再会する冒頭のシーンは、とてもエモーショナルだと感じたね。彼は彼女のことを信頼しているのに……という展開だが、とてもよいシーンとして気に入っているよ。