映画業界に関わる著名人の方々に、様々な角度やテーマで映画にまつわるお話をまとめました。
コニー・ニールセン俳優
1作目のこと、ずっと覚えています。ロケ地のマルタ島に着いて車に乗って初めてセットに行った時、丘の上には中世の要塞がありました。そこにコロセウムの3分の1のセットを作ってあり、葉巻をくわえたリドリー・スコット監督がいて、「これが君のローマだ、建てたよ」と言ったんです。
巨大な宮殿があり、軍隊が行進する道もあり、もうわけがわからない感じでした。まだ若かったですし、これは普通のことなんだと思いました。
そして今回、同じ場所に戻りました。25年が経ち、最初に行ったあのセットと同じ場所に立ちました。これは映画だからそんなに驚かないだろうと思っていたのですが、そんなことはなかったんです。セットに入り。コロセウムに足を踏み入れたら、もう現実とは思えなかった。この中に二度も入るわたしの人生とはどういうものなのかと、信じられなかったです。
リドリー・スコット監督は自分の演技を全部確認してくれたので、若い頃は巨大なセットがあっても普通のことだと思っていたように、自分の主張を奨励してくれる監督も当たり前だと思っていました。でも、約25年の俳優経験を経てあのセットに戻った時、彼がどれだけ珍しい、唯一無二、ほかにいない人なのだと、特別な人なのだと自覚しました。
まず直感的に当時の歴史を自分の頭の中に入れようと思いました。『グラディエーター』の後に起きた何年もの後、彼女はどういう状況で生きていたのかを。撮影前にニューヨーク、デンマーク、コペンハーゲン、ロンドンなど、いろいろな博物館に行きました。わたしが演じている家族の胸像を見ました。父や夫がいて、コペンハーゲンのコレクションの中に頭が小さい像があって、それがルッシラでした。これが興味深かったんです。
男性は巨大な銅像が残っていますが、女性の扱いは小さい。女性は歴史において間違いなく歴史の一部を果たしていたのに。皇帝を産んでる人たちなわけですから、すべてに貢献しているんです。当時の女性の真実は、ただでは倒れない力強さ、生き方にあります。実際政治的な駆け引き、計算高さに長けていた人たちだった。彼女たちも戦ったんです。ロビー活動もした。政治的な駆け引きをしていく子どもたちも育てたんです。ただ、当時の社会は夫が気に入らなければ、自分の妻を手にかけていい時代でもありました。なのでそういう発言をする女性は、よほど勇気がないとできなかったんです。
そしてわたしが演じたルッシラは、共和制ローマというものをとても信じていた女性でした。なので自分の頭の中に共和制ローマがどういうものかしっかりと叩き込みたかったので、イギリスの歴史家トム・ホランドのローマにまつわる本を読みました。ルッシラが生まれる180年前に起きたことを書いてある本でしたが、彼女は歴史に詳しい父親を持ったので、彼女自身も分かっていたはずなんです。共和制ローマは何が機能しなかったのか、何が失敗したのか、では何を変えれば共和制ローマが復活するのか彼女は分かっていたはずなんです。
彼女のキャラクターに何を持ち込めたか、ですよね。ローマの黄金時代の最後を飾ったのが彼女の父親の時代で、野心や虚栄心によって権力を独占することのないようなチェック機能でしっかり納めた皇帝たちがいました。それを彼女は見ていた。でも今回のルッシラは、父がいなくなり、その後20年間、政治混乱、社会混乱、虚栄心、政治腐敗、残酷なことを目の当たりにしました。それらが横行して、権力のチェック機能が全部なくなっていた。なので、そういうことが分かっている人だということを全体で表現する必要があり、彼女が行動を起こしていることをしっかりと伝えたかったんです。なので皇帝や人前に出る時に、彼女は自分の姿勢でローマのあるべき姿を背負い、全身で伝えようとしていたんです。
BIOGRAPHY
1965年生まれ、デンマーク出身。
コペンハーゲンで育ち、10代より活躍。2000年、リドリー・スコット監督の『グラディエーター』のルッシラ役で国際的なスターとなる。主な出演作に『ディアボロス/悪魔の扉』(97)、『ワンダーウーマン』シリーズ、『ジャスティス・リーグ』シリーズなどがある。