―
「夏美のホタル」で共演された方々の印象を教えてください。
〝地蔵さん″役の光石研さんとは以前にもご一緒させていただいたんですけど、廣木隆一監督は、光石さんに対してもいいお芝居ができるまで容赦なくテイクを重ねられていて。光石さん自身も「久しぶりに鍛えられたな~」って言われていたんです。その時、勝手に親近感を覚えました(笑)。〝ヤスばあさん″役の吉行和子さんにはただただ癒されました。吉行さんが笑っていると私も嬉しかったですね。仏師の雲月を演じられた小林薫さんは、意外と可愛らしいところもあって(笑)。恋人の慎吾を演じた工藤阿須加くんは私よりひとつ年上。身体はガッチリしているけれど、とても繊細で慎吾っぽい人。撮影の初日は、すごく緊張していたのを覚えています。
―
夜の公園で、夏美と慎吾がこれからのことについて話すシーンが印象的ですね。
あのブランコに乗って話すところは、けっこう何回もリハーサルをやって、廣木監督から「つまんね~芝居だな」って言われてしまいました。廣木監督は現場で「こっちの方に歩いてきて」と指示されるだけで、あとは「とりあえずやってみて」という感じなんです。だからブランコに座ってもいいし、漕いでもいいし、そこは私たちの自由。でも、あそこは慎吾が夏美をリードするシーンなので、工藤くんは大変だったと思います(笑)。
―
夏美は仏師の雲月から「才能とは覚悟をすることだ」と言われますが、あの言葉についてはどう思いますか?
その通りだと思います。やっぱり、どこかで腹を括らないと、限界まで頑張れないから。私もこの仕事をやっていく覚悟ができていなかったり、腹を括れていなかったら、どこかで〝もう無理!″ってなっていたかもしれません。
―
苦しんでいるあの時点の夏美は、昔のご自身と重なりませんでしたか?
夏美が自分に才能がないことを認めたくなくて、まだ可能性があるんじゃないか?って思うところはすごく分かります。でも、才能がないことに気付き始めてなお、立っていられる夏美はたぶん精神力が強いんでしょうね。強くないと自分で立てないから、そこはスゴいなって思いました。
―
でも、そこは有村さんも一緒ですよね。
まあ、そうなんですかね(笑)。私の場合は自分がやりたいと思ったことだったから、余計に頑張れたんだと思います。もちろん私にも、もう無理かもしれないって思う時はありますよ。だけど、一個一個の作品に残していきたいものがあるから、頑張ろう!という気持ちになるんです。
―
諦めずに女優の仕事を続けられてきて、見える世界は変わりましたか?
変わってきたと思います。仕事に対する考え方やモチベーションもデビュー当時とは全然違います。以前は自分が何をやりたいのかが見えてなくて、とりあえずお芝居をやるみたいな感じでした。でも、いろいろな経験を積んで、様々なタイプの監督との出会いがあって、作品を作る時に大事にしたいものや、この監督ともう1回やりたいな、こういう作品に出たいなと思うようになりました。考える幅が広がってきたような気がします。