THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE93 俳優 柳楽優弥 女優 有村架純

戦時下で懸命に生きた人たちの青春物語で、かつ家族の物語でもあるのがステキです(柳楽)

―『映画 太陽の子』(8/6公開)では、戦時下、軍の密命で原子核爆弾の研究開発を進める修と、その幼なじみの世津をそれぞれ演じられています。最初に脚本を読まれてどう思いましたか?

映画 太陽の子

柳楽:

「『日本に原子の力を利用した新型爆弾を開発していた人たちがいた』ということを初めて知って、演じる上でたくさん勉強しなければ、と思いました」

有村:

「私も脚本を読んでその事実を初めて知り、衝撃を受けました」

柳楽:

「ただ、戦時下で懸命に生きた人たちの青春物語、かつ家族の物語でもあるのがステキだな、と」

有村:

「そんな家族の物語と新型爆弾の研究が交錯して描かれ、とても読み応えがありました。『ひよっこ』でご一緒した黒崎博監督が10年の月日と熱量をかけた企画であることにも心打たれましたし、一緒に頑張りたいと思いました」

―研究に情熱を傾ける修、戦争後の未来を見据える世津。それぞれの役にどう向かい合っていったのでしょうか。

映画 太陽の子

柳楽:

「京都帝国大学で物理研究をしている修は、これまでの自分には全く縁のない世界で生きている人。彼らが研究開発を追求する姿と、僕ら俳優が役のために、彼らが何をしていたかを学ぼうとする姿やそのエネルギーが、自然とリンクしていったのがおもしろかったです」

有村:

「世津は、観て下さる方に最も近い感覚を持つ登場人物なので、彼女に寄り添って生きられたらいいな、と思いました。戦争を体験された方々の記事をたくさん読み、その中で出会った言葉や感覚をいただきながら、彼女が持つ葛藤や苦しみを内包しつつ、世津を演じるように心掛けました」

柳楽:

「前半はみな純粋な思いで開発に向かっていくのですが、段々と戦争を経ていくと、研究することを自己肯定できなくなって壊れる人も出て来て…。純粋さが狂気の方向にすり替わっていく修の感覚を、すごく怖く感じました」

歴史の中であった事実を、私たちは残さなければいけない。と同時に未来を担う人たちにとっての映画だとも思います(有村)

―戦争を知らない世代が大半となった今、どんな風にこの映画を届けたいと思いますか?

映画 太陽の子

柳楽:

「こういう作品を通して、戦争を“怖い”と思い続けてもらうことに意味があるし、とても必要なリアクションだと思うので、若い世代の方々に観て欲しいです」

有村:

「今の“失われていく日常”とも共通するものがありますが、戦禍を生きた人たちは、もっともっと心に傷を負って生きてきた。それくらいのことが歴史の中であったという事実を、私たちは残さなければいけない。同時に未来のために自分たちがどういう行動や発言をしていくか、未来を担う人たちにとっての映画だとも思います」

―お二人はCMでも共演されていますが、この作品を通して改めて感じられた役者としての魅力は?

映画 太陽の子

柳楽:

「架純ちゃんはそこに居てもらえるだけで、すごく心強くて。黒崎博監督と『ひよっこ』で最強タッグを組んだ女優さんなので、共演するとなれば自然と僕も頑張らなければと思います。相乗効果が生まれた気がしました」

有村:

「現場での柳楽さんは、少年みたいな部分が垣間見られたかと思えば、とても大人な部分もあって、それが混在している印象でした。基本的に寡黙で、常に修行しているような感じもあって」

柳楽:

「わはは、修行僧!(笑)」

有村:

「本当に浮ついたところがなく、一つ一つ丁寧に向き合う姿がステキだと思いました」

Profile


					柳楽優弥 1990年生まれ、東京都出身。是枝裕和監督作品『誰も知らない』(04)にて、第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を日本人初、史上最年少で受賞。近作に、『泣くな赤鬼』、『ザ・ファブル』(ともに19)、『ターコイズの空の下で』、『HOKUSAI』(21)など。TVドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」(10月放送開始)、Netflix「浅草キッド」(冬配信)が待機中。
					有村架純 1993年生まれ、兵庫県出身。2010年にデビューし、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)で注目を集める。今年の出演作に『花束みたいな恋をした』、『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』『るろうに剣心最終章The Final/The Beginning』(21)などがある。2022年に主演作『前科者』が公開予定。
撮影=野崎航正 取材・文=折田千鶴子

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