―ものすごく完成度が高くて、3時間弱をまったく感じない体感時間でしたが、感想の声で一番うれしかったものは何ですか?
バーバラ:
これは(原作者の)スティーヴン・キングが言っていたことだけれど、前作のほうが『ゴッドファーザー』の1で、今回はパート2くらいのレベルだと言ってくださって、これはもう最高よね。
監督:
まだどっちがいいか決めかねているともね(笑)。実は1と2のどっちがいいかって、意見がわかれているんだ。登場人物は同じ世界に暮らしているけれど、まったく違う映画だからね。トーンも違ければ、2のほうはもっと大人の視点で描いている。ユーモアもあるけれど、視点は大人だ。そして今作は、トラウマについての映画。個人的には今回のほうが好きかな。ちょっとだけね。「すごく大きな冒険物語だよね」と言ってくれたことが、すごくうれしかった。
―27年のサイクルで“それ”が来るという時間設定が効いていますよね。
監督:
というのは僕は、ドラマを目指していて、キャラクターの深みも試みたからね。そしてホラー映画でもある。だからすごいアドベンチャーだったと言ってくれると、その3個が全部入っていることになる。僕にとっては、最高のホメ言葉だ。つまり多層的な映画ということだよね。
バーバラ:
あといろいろな人に言われたことは、2回目、3回目を観ると、新しい意味が見えてくるということ。1回目はすごく緊張感があるので、笑ったり怖かったり、でも2回目になると、これはトラウマの話だったかということがわかる。何かが起こって、それを解決しないでいると、それを重荷としてずっと背負っていかないといけないということがわかるの。
―観客を観ていて退屈させないような、技巧的な工夫はあるのですか?
監督:
ペースの問題じゃないかな。もちろんすごく魅力的なキャラクターを作ることは重要で、すごくいい俳優を使うことも大切だ。そこで間違えると、映画からも気持ちがそれてしまう。特に1作目があって子どもが出ていて、僕にとっては彼らを再紹介することが大事だった。それで観客に、同じ場所にすぐ戻ってもらうことが大事だった。そこでペースだ。基本的なことで、編集で決まるもの。同じ素材を使っても、退屈にもなる。
バーバラ:
編集次第で、完全にコメディーにもなるわ。
監督:
特に編集室での作業、テストスクリーニングは、映画監督にとっては、最初はフィルムメーカーにとっては侮辱的な経験になるけれど、でもそれをやったあとのスクリーニングは、やったかいがあったなと思うもの。つまり、それまでは非常に映画に近いので、外側からの意見を入れて、まったく新しい目で意見を聞くことは、非常に重要なんだ。テストスクリーニングは最後に質問も出るけれど、どこかつまらなかったとか聞いて、知る。それは助けになるわけだ。そこでもっと早いペースを作る鍵が、そこで見つかるわけだ。もちろんとても才能がある編集者と仕事をしているし、とても才能がある監督だしね(笑)。
でも、あまりにも長い間、その素材に関わっていると自然の視点が失われてしまい、それによってペース配分がおかしくなってくる。なので、ストーリーをどんどん先に進めていくために、外側の意見も聞くわけだ。
―プロデューサーとして意見はしましたか?
バーバラ:
彼は嫌がったけれど、しないわけがなかったわ(笑)。もちろん、意見したわ。それはわたしの仕事の一部。と同時に、わたしの仕事の多くは、彼のビジョンを支えることでもあるの。彼のために戦いもしたわ。彼が首尾よく撮影できるための戦いもした。編集室に行くということは、全然違う映画にかかわるようなものなの。ものすごく大きな仕事であり、まったく違う作業でもあるの。
監督:
ずっと編集室にいるわけではない人の意見はすごく大事だ。たまに来て、いろいろ言ってくれる人は必要なのさ。でも、本能はあるから、本能に逆らうことはとても難しい。たとえば吐くシーンだね。
―2回くらいありましたか?
監督:
その時にバラードが流れるが、あれはいきなりかかる。理由はないんだ。でもあの曲をかけた。本能的に。それでおかしくなる、笑えると思ったんだ。で、バーバラみたいな人が来て、「なんでこの曲が?」って言うわけ(笑)。
バーバラ:
時には負けるけれど、勝つこともあるわ(笑)。
―けんかもしましたか?
バーバラ:
もちろんよ!
監督:
毎日だ。でもクリエイティブな意味のけんかではなく、もっと実務的なものだけれどね。
バーバラ:
わたしのかわいい弟だから(笑)。
監督:
全部のプロセスの中で、ひとつの中心人物は監督だ。でも僕たちだけでやっていると、撮影の時間がみるみるなくなる。彼女はプロデューサなので、終わらないといけないと言う。でも僕はもっと撮影したい。もうワンショットだけね。でも、彼女が止めろと言う。
バーバラ:
彼はいつも足りない足りないと言うのよ。
監督:
すごく自分勝手に聞こえるかもしれないけれど、そうじゃないよ。その映画がわかっている唯一の人は、監督しかいないから。だから帽子をかぶるのさ。ほかの人の声が耳に入らないようにね。尼僧みたいな黒い帽子があるんだけど、それでモニターだけ観て、外からの意見をシャットアウトしている。
バーバラ:
その空飛ぶ尼僧の帽子をかぶっている時で、ある日、300人くらいクルーがいるなかでわたしのほうをクルっと向いて、主役もいるなかで、撮影も始まっているのに「このシーン要らないかも」ですって!
監督:
そうだっけ(笑)。
―どういう風に見たら楽しめるか、最後に鑑賞法を教えてください。
監督:
まずは携帯電話を切ることかな。新しい若い世代にとっては重要で、僕もスナップチャットなどいろいろなSNSを年中チェックしているけれど、スマホは置いて、電源を切って、ポケットにしまって、自分が知っている中でベストな劇場に行って観ることだろうね。
バーバラ:
子どもの時に、どういう友だちがいたか思い出しながら観るといいと思うわ。
監督
僕たちみんなが共感できる映画のはずさ。というのは、みんな一時は子どもだったわけで、40歳以上なら、もっとこのキャラクターたちに共感できるかも知れないからね。でも、どの世代の人たちも楽しめると思う。前作が好きだった人も、そうじゃない人も楽しめると思うよ。