THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE25 監督 ボビー・ファレリー

ジム・キャリーが電話をくれたんだ。「もう1回やろうよ!」ってね

― ファン待望の続編は、主演のジム・キャリーがやる気になったからそうですね。

帰ってきたMr.ダマー バカMAX!

そうなんだ。彼が滞在中のホテルでテレビを観ていて、『ジム・キャリーはMr.ダマー』(94)が始まったらしいんだ。もう15年くらい前のことだけど、映画が公開されて以来、観ていなかったそうでね。ロイドを演じて楽しかったことを思い出したそうだ(笑)。それで電話がかかってきて、「もう1回やろうよ!」と言ってくれた。ジェフ・ダニエルズも僕たちとなら「ぜひ一緒にやろうぜ!」といことで、それがきっかけだったよね。

― まさかジムが、って感じでしたか(笑)?

いやあ驚いたよ。そして感激した。でもね、僕たちとしても彼がそう言い出してくれればみたいな淡い期待を、どこかで持っていたことも事実だね。彼自身も彼のファンのなかでダマーというキャラクターが一番だと言われることが多いみたいで、それで思い立ってくれたとも思う。ファンの後押しもあったというわけだ。

― 相変わらずバカバカしくて、爆笑しました。20年前の前作と、何も変わっていない世界観に感動しました。

そうだね(笑)。何も変わっていないと思うよ。そもそもコメディーとは多少なりとも、いろいろなことをバカにするものなのさ。そういう時に、中心のキャラクターが良い人物、我々が同情できる人物であることに設定するノウハウは変わらない。ある程度、同情できるキャラクターがいるからこそ、ユーモアが生まれてくるわけだからね。

映画館では通路側をキープする。なぜって、トイレにすぐ行けるから(笑)

帰ってきたMr.ダマー バカMAX

― さて、映画館で映画を観る際は、どのように楽しみますか?

通路側の席とポップコーンだね。なぜ通路側かわからないけれどね(笑)。可能な限り通路側。すぐトイレに行けるから(笑)!

― 最近の映画は映像技術の革新が進みましたが、映画館での技術面の発達については、どのように考えていますか?

正直なところ、あまりよくは思っていない(笑)。人間同士の交流などとは関係ないところで、ただスペシャルエフェクトだけが一人歩きしている感じが基本的に好みじゃないからね。やはり僕はストーリーにこだわりたいと思っていて、いわゆるテクノロジーにはそれほど関心がないよ。ただ、業界の中では実績を上げているということは事実。ただ、だからといって僕は違う、ということかな。

― では、最近は映画館で映画を観ることも少ない?

確かに昔ほど映画館へは行かなくなったが、それはひょっとするとコメディーの製作本数が減っているからかもしれない(笑)。自分自身が好みのジャンルなので、映画館で観ようと思うけれど、やってなければ観られないからね。

ボビー・ファレリー

― コメディー映画は、どうして減っているのでしょうか?

世界のマーケットのことを考えた時に、それほど業績を上げていないからだと思う。アクションやSF系が中心で、そういうジャンルは当然海外でもうけやすい。現状のスタジオも、昔のように力を入れてコメディーを作っていない。海外のマーケットにわかってもらえないということは、もっとも大きな理由だろうね。

― コメディー映画を撮る才能が減っているということはありますか? 観客を泣かすことは容易そうですが、笑わすことは難しいですよね?

いや、必ずしもそうとは言い切れない。コメディーが作られないから、才能ある監督たちはほかのジャンルで頑張っている、ということかな。

観客はいつも正しい。この先も映画を忘れないで!

ボビー・ファレリー

― それにしても主人公たちの姿を観ていると、人は無理に成長する必要はないとさえ思えてしまいます(笑)

僕たちがほかに作った映画では、主人公たちが学んでいくようなストーリーの作品もちろんあるけれど、このシリーズに関して言うと、その点ではユニークでね。主人公たちはまったく学ばず、何の成長もない(笑)! もちろん、意図的な設定で演出だ。ただただ、映画の中でひたすら楽しみまくっていて、それを観た観客も楽しい気分になるほどだ。そして友情も変わらず、友だちとしてそこにいることだけも変わっていない。そこが大事だと僕は思っているけれど。

― 良質なコメディーを作り上げる秘訣は何でしょうか?

多少の問題はあるけれど、気に入ってくれるキャラクターを作り出すことが、すごく大事だ。もちろん、問題があるから間違ったことをしてしまうキャラクターになるわけだがね。この映画で言うとおバカさんだが、悪意のないおばかさんだから、すごくピュア。だからこそ観客は同情してくれるということ。僕ら兄弟は、そういうキャラクターを作りさえすれば、コメディーとしてカタチにはなると思って毎回映画を撮っているんだ。

― 最後になりますが、映画を楽しみにしているファンや、「イオンシネマ」のスタッフにメッセージをお願いいたします!

ドウモアリガトウ! 観客はいつも正しい。今後も映画を忘れないで!(笑)。最近のキッズにとって映画は、刺激がないものになっているそうだ。集中力の短さもあるかもね。YouTubeの派手な短い映像に慣れていると、2時間座って映像を観るなんて、悲しいことながらナンセンスになっているかもね。だからこそ、今後も映画を忘れないでほしいよ。

Profile


							プロフィール ボビー・ファレリー 映画監督 1958年、アメリカ、ロードアイランド州生まれ。2歳上の兄ピーター・ファレリーとともに、1994年『ジム・キャリーはMr.ダマー』で堂々の監督デビュー。兄のピーターともども傑出したコメディセンスを世界的に認められ、続くベン・スティラー、マット・ディロン、キャメロン・ディアスの『メリーに首ったけ』(98)も世界的に大ヒット。低予算ながらも高い興行収入を打ち出す映画を生み続ける、真のコメディー映像作家としての地位を確立する。現在“おバカ”コメディーの巨匠として、常に最新作が待たれる存在に。
取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)

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