―近日公開予定の「水上のフライト」は、不慮の事故で高跳び選手としての夢を絶たれた遥がカヌーと出会い、パラリンピックを目指す物語ですが、事故以前の遥は、鼻持ちならないほど自信満々で高飛車な人でしたね
「まさに“ザ・女王”と呼ばれ得る雰囲気の、ちょっと意地悪でイヤな奴だったと思います。でもスポーツ選手として頑張っている人は、誰かと比べて頑張るというより、自分自身との孤独な闘いを続けていると思うんです。そんな遥でしたが、自分のすべてを懸けてきた陸上が出来なくなり、カヌーと出会って少しずつ色んなことに気づかされていく。遥の成長や変化を感じさせるためにも、冒頭の嫌味な姿は、とても大事だと思って演じていました。」
―ところが、カヌーの先生に「カヌーでパラリンピックを目指さないか?」と言われた際、遥は激しく怒って拒絶しますね。
「確かに遥はカヌーを楽しいと思い始めていましたが、自分のすべてを懸けてきた陸上がダメになったからといって、すぐにカヌーに飛びつくような気持ちには、とてもなれなかったんですよね。遥の孤独感や怒りがすごく表れている、演じていても色んな気持ちがあふれてきたシーンでした。」
―一方、エンジニアの颯太が遥に言う「今までは一人で生きてきた、と思ってるんだ?」という意味の台詞が、とても印象深かったです。
「私も、その台詞が一番強く印象に残っています。遥の気持ちの転換となる、とても大事で、大好きなシーンです。実は私自身、何でも一人でやっちゃうタイプなので、お母さんからよく『一人で生きてきたみたいな顔をしてるけど、ちゃうで』とよく怒られていたんです(笑)。今ならこの台詞の意味がすごく分かるな、と思いました。それに人間、誰しも一人では生きられないし、人に迷惑をかけるのも当然。それに与えられたものを誰かに返すことが出来るのも人間なんだ、など様々なことを考えさせられた台詞です。」