―俳優という仕事には“定年”がありません。6/9(土)公開「終わった人」にご出演されたお二人から見ると、 田代壮介・千草夫妻が直面する“定年騒動”をどのように感じましたか。
舘:
最初はピンと来なかったですね。でも逆に、定年を考えたことがなかった自分が危ういな、と思いました。 使えないのに頑張っている、なんてことにならないよう自分自身がどこかで(キャリアを)切らないといけないな、と
黒木:
私は夫がサラリーマンなので、身につまされています。やっぱり彼も定年を迎えたとき “生前葬だ”と思うのかな、とか、次の日からずっと家に居るのかな、とか(笑)
舘:
壮介のように仕事一筋で来ると、定年でその足場を失ってしまう。だからやることがない。 逆に、僕は地に足を付けたことがなくフワフワして生きてきたので、その心配だけはないですね(笑)
―『リング』『仄暗い水の底から』などホラー作品が思い浮かぶ中田秀夫監督が、今回、人情喜劇に挑まれました。 資料によると舘さんご自身も“慣れないコメディ仕立てで不安もあった”とあります。現場でコミカルなシーンをどのように作られていきましたか?
舘:
ちょっとやり過ぎかな、と思うようなお芝居も監督の許容内だったので、どんどん楽しくやらせていただいて。 脚本にないお芝居も、たくさん現場で生まれていきました
黒木:
もう、舘さんが可笑しくて。カッコつければつけるほど、どんどんみじめに見えていくのが、スゴイ!! 普段の舘さんとは全然違って
舘:
一番すごかったのは、広末(涼子)さん演じる若い女性と食事をした後、壮介が妄想で頭をパンパンにして“あまりお酒を飲まなくて正解だった~”と快哉するカット。 あれ、僕の股間の下からカメラが狙っているんですよ。中田監督、割とえぐいカットも撮る(笑)!
―中田監督と何度もお仕事をされている黒木さんから見て、今回の現場での監督は、いつもと違う緊張感などがありましたか?
黒木:
いつも以上に、とても楽しんでいらしたと思いますね。何しろ監督がすごく惚れ込んだ原作の映画化。 壮介がご自分と同じ東大卒ということもリンクしたんでしょうね。 “特技のない東大生ほど、潰しがきかないものはない”というセリフも琴線に触れたから、セリフとして生かされたのだと思いますし
舘:
1カット1カット、魂こめて撮影されているのが伝わってきますよね。毎回、本番に入る際、監督が必ずキュッとハチマキを締め直すんですよ。 それで一度、手を後ろに持って行って締めようとしたらハチマキがなくて、エアハチマキしていた!(笑)
黒木:
え、可愛い(笑)!! それくらい集中していらっしゃるんですね
―最後に、映画を観る方へのメッセージをお願いします。
舘:
タイトルは『終わった人』ですが、人間はなかなか終われない、ということをこの映画は描きたかったのかな、と思います。“だから、もっと前向きに行こうよ”と
黒木:
終われないからこそ、観る方にエールを送れる作品なのかな、と。大人の方々に楽しんでいただける作品になっていると思います