―演じた四乃森蒼紫というキャラクターは、緋村剣心を倒して最強の称号を仲間に捧げる執念にとりつかれ修羅と化す、壮絶な男ですね。どういう内面だと理解して演じましたか?
原作上はクールなキャラクターなんですが、撮影現場ではアクションに集中するあまり感情を隠す事が出来ず、本番の撮影では想いがほとばしってしまいました(笑)。剣心と火花散る状況になっていましたね。でも最初はクールに演じようと自分でも思っていましたが、蒼紫の中にくすぶっている気持ちがものすごく黒いので、長く演じている過程で何か違うもの、違う感情などが表に出てくる。それはそれで間違いではないとも思いましたね。
―蒼紫は、前に進めない想いが屈折した形で表に出てしまう哀しいキャラクターですよね。
彼のバックグラウンドにある自分が裏切られたという想いと、その辛い心境のなかでも最強を示したいという想いがないまぜになって生まれた、言うなれば現代に持ってきてはいけない考え方を持っている男ですよね。報復という意味もあるので、ある種、曲がった志の中に生きている。したがって、ある程度は、ダークな感じになってしまいますよね。
―蒼紫は剣心と互角に死闘を展開します。剣心役の佐藤健さんと実際に対決した感想は?
400手ありましたので、1日80手くらいの計算ですよね。もちろん1日で覚えられる量ではないので相当前から準備して入りましたが、気が入って来るとスピードが上がって、お互いに激突してしまう瞬間があったりはしましたね。実は京都大火編の時に田中泯さんの膝に水がたまってしまったにもかかわらず、1日で復活するという様を見て(笑)。僕よりも30歳以上年上なのにもかかわらず、思いっ切り立ち回っていて、泯さんが頑張っているのに、僕がひいひい言っている場合じゃないと思ったことがありましたが、健君とのシーンの時は僕の膝に水がたまるという(笑)。なので、やるしかなかったですね。でも、肉体が悲鳴を上げると、それがプレッシャーとなって精神的に追い込まれていく。それはいいことでしたよ。
―さて、おかげさまで「イオンシネマ」は誕生一周年を迎え、多くのお客さまにご満足いただけております。その中で映画人としてシネコンに対する期待や要望などはありますか?
ちょっと質問の答えと違うかもしれませんが、往々にして表現作品は、そういうものすべてがどこかでお金に支配されて、提供する内容や情報が決まっていく現実がありますよね。それがサブカルチャーの存在を、わからないように、気づかないうちに削っていっている気もしているわけです。昔、「ぴあ」という情報誌が週刊であった時代は、大きな映画も小さな映画も同じサイズの誌面の枠で紹介していて、もちろん特集ページもありましたが、そのなかでメインのカットではない、サブのカットでサブキャラが空を見ているような、何気ないカットをピックアップして作品を紹介していて。あらゆる映画をイーブンで扱う「ぴあ」を僕たちは眺めていたわけですよね。
―確かに作品に対する公平感はありました。その中で自分で選択して観る楽しみもあって。
そういうことが、今はなかなかないですよね。どうしてもWEBサイトで一番上に出る映画情報を得て、検索して結果を得て、終わりにしてしまう。そもそも映画はビジネスなので、求められる映画を多く作って上映することは必要なことかもしれないですが、でも、その隣にひとつだけ、スペシャルチョイスドみたいなものが残っていたりしたほうがいい。その映画に限って学生は安く入れるとか、若い人たちにもっと映画になじめるようなアイデアがあるといいですね。何百館あけるような大作映画もあれば、自分で発見して自分だけの喜びを作ってあげるというか、そういう作品もちゃんと提供する場所があってもいいと思いますね。
―最近ではシネコンでもオリジナルの企画作品を特別上映するケースも出てきてはいます。
上映する映画の選択は独断と偏見でいいと思いますが、お客さんがたくさん集まるイオンシネマさんであれば大きなパイを見てジャッジが可能なので、それは可能だと思います。ビジネス枠での一位、二位の作品だけではなくて、お客さんに問いかけてさまざまな反応が返ってくるような映画もどんどん上映してくれるといいですよね。いまは小さな劇場がなくなってきているなか、そこを捨てないでいただけるようなサービスや企画に期待します。日本映画自体の幅も狭くなっているので、実験的な映画を作る土壌作りとしても発展していければいいと思いますね。
―映画人として、“るろ剣”のような人々が支持する映画を届けることは意味がありますね。
そうですね。僕はすごく個人的にも“るろ剣”には感謝していて、それこそ大友啓史監督が俳優のモチベーションさえも操って、限界を超えるような撮影に挑戦させてくれて、まさしく役者冥利に尽きました。そういう現場に駆り出されることは本当にうれしいことで、体が削れても楽しかったということが、最初に出てくる一番強い想いですね。
―これだけの超大作を作り上げる過程では、心が折れそうになった瞬間もありそうですが。
挫折禁止が座右の銘なんです(笑)。一日の中で気分的なアップダウンは確かにありましたが、ただ、根本的に俳優がその場に乗ったら、途中で降りることはまずないですから。やり切る根性は当然ありましたよね。大友監督にいただいたエネルギーやモチベーションを演じるキャラクターの中で発揮し続けることは、これも役者冥利に尽きること。僕たちは、スタッフさんの努力や想いも含めて抱えているモノが多いので、過ぎた時間を振り返る隙もなかったですね。だから、すごく幸せな時間でした。心が折れるヒマがない、って感じです。
―最後ですが、「イオンシネマ」で映画を待っているファンにメッセージをお願いします!
僕は、イオンさんのCMキャラクターも務めさせていただいていて、その上俳優としてだけでなく、自分の会社である「リバースプロジェクト」としてもお世話になっているので、よく存じ上げております(笑)。イオンさんにはたくさんのお客さんが集まる施設があるので、お客さんの目にとまるような展開をお願いしたいですかね。宣伝が少ない作品もあるので、何かしらのスペシャライズドを現地で最終的に付けてあげることで、価値が上がると思います。そうすることで、人の流れも増えると思います。何か企画があれば、「リバースプロジェクト」で作りますよ(笑)。