THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/voice123 映画監督 黒沢清

今回は夫婦の物語もオリジナルとは異なる展開に

蛇の道

―今回のこの『蛇の道』は、セルフリメイクになるわけですよね。

5年前、フランス人のプロデューサーにある日突然、これまでの監督作をフランスでリメイクする気はないかと言われたんです。考えたこともなかったのですが、それが許されるのであれば『蛇の道』でやりたいと言ったら、実現してしまったという感じです。言ってみるものだなと。

リメイクするならこの作品と常々思っていたわけではないので、『蛇の道』と、さっと口から出て来たことは自分でも不思議でした。ただ、『リング』の高橋洋が書いた脚本がとてもよく出来ていて、それがVシネマで終わることはもったいないなと、どこかで思っていたのでしょう。

蛇の道

―リメイクされ、改めて気付いた魅力についてはいかがでしょうか?

もともと自分の娘を殺されてしまった人間の復讐劇で、今回もそうなのですが、男性を女性に変更しています。オリジナルは男二人のペアで復讐していく話でしたが、今回はひとりはフランス人男性、もうひとりは日本人女性、彼女を柴咲コウさんが演じていますので、男女のペアになっています。

すると、オリジナルとはまったく異なる展開に変化していきました。男には妻がいて、女にも当然夫がいるわけですから、だんだん互いのパートナーの存在が気になってきたのです。前回は男同士なので触れていなかったけれど、夫婦間はどうだったのかという要素が後半の大きなテーマになって行きました。『蛇の道』という物語から、まさか夫婦の物語になっていくとは。これは発見でした。新しいチャレンジになったと思います。

映画は、映画館で不特定多数の方と一緒に観たい

蛇の道

―映画館で映画を観る際、作品選びはどのようにして決めていますか?

「これは面白そう」ということに尽きます。なかには仕事柄、観ておかなければいけないような映画もあるにはありますが(苦笑)、自分が観たいものを観ています。映画は、不特定多数の方と一緒に観たいですよね。

蛇の道

―こだわりの鑑賞スタイルはありますか?

特に理由はないのですが、左の後方で観ることが多いですかね。たぶん、ど真ん中が嫌なのかなと思います。偉そうな感じがするのかなぜだか分からないのですが、下手のほうにいつも行ってしまいます。

あとは映画が終わっても席をなかなか立たない、一番最後に劇場を後にしたいタイプなんです。ほかの方にご迷惑がかからないよう、自分がその時座っている位置にもよるのですが、最後がちょうどいいなと。そして始まりも、なるべく早く入りたい。まだ明るいうちから中にいたい感じです。

蛇の道

―映画館なので、じっくりと作品を堪能したいですよね。

今こうして映画監督としてプロでやっていますので、ギリギリに入って、とっとと出ていくということはしたくないんです。最初から最後まで、ゆっくり余裕を持って味わいたいということはあると思います。

二転三転する復讐劇 固唾を飲んで見守ってください

蛇の道

―男の復讐を手助けする心療内科医・新島小夜子を演じる柴咲コウさんの印象はいかがでしたか?

柴咲さんとは今回初めてご一緒したのですが、素晴らしかったです。非常に怖い憎しみを秘めたような表情もされるのですが、同時に動きが獰猛と言いますか、素早くナイフを投げたり、パッと人を抑え込むなど、正直なところ、そんな動きが出来る方とは思っていなかったんです。もともとの身体能力がないと無理なんですよね。僕は、彼女のそれを知らなかったんです。今回フランスの男たち相手のアクションもけっこうあったので、一見華奢な柴咲さんに出来るのかと思っていましたが、心配には及びませんでした。

蛇の道

―これから映画をご覧になる方たちへメッセージをお願いいたします。

自分の娘を殺され復讐に燃えているフランス人男性と、それに協力する日本人女性役の柴咲コウさんが、フランスで復讐を果たして行こうとする物語ですが、本当のターゲットは誰なのか、二転三転します。最後まで物語は揺れ動きますので、みなさんスクリーンから目を離さないようにして、この復讐劇がどう落ち着くのか、固唾を飲んで見守ってください。

Profile

黒沢清 映画監督 1955年7月19日生まれ、兵庫県出身。 大学時代から8ミリ映画を撮り、『スウィートホーム』(88)で初の一般商業映画を監督。『CURE キュア』(97)で世界的な注目を集め、『回路』(01)では第54回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。以降、『アカルイミライ』(03)、『トウキョウソナタ』(08)、『Seventh Code セブンス・コード』(14)、『散歩する侵略者』(17)など、数々の作品が国内外で高い評価を得る。 待機作に菅田将暉主演の『Cloud クラウド』がある。
取材・構成・撮影/鴇田 崇

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