THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE90 女優 松本穂香

「“日々の生活を丁寧に送らないといけないな”と思わされました。」

みをつくし料理帖

―10巻からなる髙田郁による累計400万部を超える大人気の同名小説を映画化した「みをつくし料理帖」(10/16公開)。本作は、その前半3巻を中心に映画化されていますが、原作または脚本を読まれて、どんな感想を持たれましたか。

脚本と原作も読ませていただき、すごく大好きな作品になりました。何度も「食は、人の天なり」という言葉が出てきますが、読んでいる最中やこの作品に関わっているときは、「もう少し考えて日々の生活を丁寧に送らないといけないな」と本当に思わされました。映画は澪と野江ちゃんの友情に、より焦点が当てられているので、私がグッときたシーンも野江ちゃんとのシーンが多かったですね。澪の中で「道はひとつきり」という思いの軸になるのが野江ちゃんの存在なので、2人の関係性や友情について、幼馴染の存在とはどういうものなのかなど、クランクイン前はずっと考えていました。現場では、野江ちゃんを演じた奈緒さんと、いつの間にか自然と仲良くなれていました。

みをつくし料理帖

―女料理人の澪という女性を作るうえで、“下がり眉”というのが、ビジュアルとしても一つの注目ポイントです。抜群の“下がり眉”具合でしたね!

原作にもその言葉が何度も登場していて、非常に大切だと私自身も思ったので、そこは気になる点でした。いい感じの下がり眉にならないかな、表情筋でどうにかならないだろうか、と鏡の前で練習をしたりもしました (笑)。相談したメイクさんから「メイクで補える部分もあるから大丈夫」と言っていただけて……。周りからも、「大事なのはそこじゃないから」とアドバイスされたり、現場でも「下がっていない」等々と言われたりしなかったので、きっと大丈夫だと思うことにしました。原作ファンの方々が思い描く“下がり眉”になっているかは不安ですが、そこはあまり注目せずに観ていただけたら(笑)、ありがたいです!

みをつくし料理帖

―澪を“下がり眉”と呼ぶ御膳奉行・小松原さまを演じるのは、窪塚洋介さんです。小松原さまを誰が演じるかというのも原作ファンにはかなり重要なポイントですが、イメージがピッタリで嬉しくなりました。

あの独特な雰囲気やたたずまいは、窪塚さんだからこそ出せる味だな、と私も思いました。ああいう方が時々“つる家”にフラッと現れて、印象に残る一言を残して帰られたら、そりゃ気になる人になってしまうよな、と(笑)。その窪塚さんが、お会いする度に私のことを「まんま、澪だね」とおっしゃって下さって。全巻お読みになられて現場に入られた窪塚さんのその言葉は、すごく大きかったですし、自信につながりました。

「こんな現場はこの先もうないんじゃないかな、と思うほど、贅沢な時間でした」

みをつくし料理帖

―そして監督は、“伝説の”角川春樹さんです。

監督を中心に、キャストも豪華、参加されるスタッフさんもベテランの方々が多く、いろんなことを練習させていただく時間もたくさん作って下さって、勉強になることばかりでした。本当に贅沢な現場であり、贅沢な時間を過ごさせていただきました。こんな現場は、この先もうないんじゃないかな、と思うほど……。この年で、そんな現場に立てたという、すごい経験をさせてもらっているな、と思いながら本作に臨みました。またずっと映画を撮られてきた角川監督ならではといいますか、長回しのワンカットにこだわって撮られていたので、長回しの緊張感っていいな、と思いました。ワンカットで撮るからこその工夫なども多々あり、面白い仕上がりになっているんじゃないかな、と思います。

Profile

松本穂香 女優 1997年生まれ、大阪府出身。2015年に短編映画「MY NAME」でデビュー。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17)や「この世界の片隅に」(18)で注目される。主な映画出演作に「あの頃、君を追いかけた」(18)、「おいしい家族」(19)、「わたしは光をにぎっている」(19)、「his」(20)、「酔うと化け物になる父がつらい」(20)、「君が世界のはじまり」(20)、「青くて痛くて脆い」(20)がある。待機作に主人公の声を演じたアニメーション「君は彼方」(11月27日公開)など。
撮影=野崎航正 取材・文=折田千鶴子

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