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「夏美のホタル」を書かれた森沢明夫さんとは以前からお知り合いだったそうですね。
そうなんです。10代の時に森沢さんと出会ったんですけど、その時に読ませていただいた「夏美のホタル」がとてもいいお話だったので、「いつか映画にできたらいいね」って話していたんです。でも、みんなは社交辞令で言ってるだけなのかな~とも思っていたので、4年越しに実現するという話を聞いた時はビックリしたし、うれしかったですね。
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原作はどこが好きだったんですか?
夏美は年老いた母親(吉行和子)と足の不自由なその息子(光石研)とひと夏を過ごすなかで、ずっと引っかかっていた父親の死に対して自分なりの答えを出すんですけど、その瞬間にすごく感動して。この温かいお話が映画になったらいいな、と思ったんです。
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廣木隆一監督とのお仕事は「ストロボ・エッジ」(15)に続いて2度目ですね。
映画化の話を最初に聞いた時に、監督は廣木さんがいいなってなんとなく思っていたんです。廣木さんなら、絶対に優しい作品にしてくれそうだったので。だから、去年の私の誕生日に「廣木さんに決まったよ」って教えてもらった時は、本当にうれしかったです。いちばんのプレゼントでしたね(笑)。
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それにしても、この作品の有村さんはいつになくのびのびとしていて、笑顔も多彩に変化する表情もとても自然ですね。
実は最初、台本から夏美のその時々の感情を読み取るのが難しかったんです。私はいろいろ考えちゃうタイプなので、特にそうだったのかもしれない。でも、ホン(台本)読みの時に廣木さんから「何も考えなくていいよ」って言われて。だから、今回は何も考えないことが私の課題でした。何も考えずに現場に行き、夏美と一緒にひと夏を過ごして感じていければいいかな~と思っていたんです。実際、撮影の2週間はずっと千葉県の大多喜町に泊まり込んでいたから、お芝居をしている感覚はあまりなくて。田舎に本当に遊びに行っているみたいでしたね(笑)。
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夏美が父親の死を受け入れるクライマックスでは、涙が自然にこぼれたそうですね。
あのシーンの撮影の時は、監督も「夏美が行けるまで待っているから」と言ってくださって。だから気持ちを整理し、私が「もう大丈夫です」と言ってから撮影したんですけど、夏美と一緒にひと夏を過ごした後だったので、流れる気持ちのまま自然にできました。それこそ演じながら思ったんですけど、撮影中はご飯の匂いとか川の音、自然の空気など五感のすべてを働かせて感じていたような気がします。この作品を観てくださる方も、ただ物語を追うだけではなく、そんな自然の匂いや音を一緒に体感してくれたらうれしいです。