―映画『終戦のエンペラー』は国際色豊かな豪華キャストの共演が、劇場公開時に話題を集めました。調整など、さまざまな障壁があったと思いますが、一番の困難は何でしたか?
日本でもっと撮りたかったんですが、やはり撮影予算がありますので。
特に海外のクルーやスターとなると大変です。日本での撮影は結局、2日間だけでした。
日本のお話なので、もっと日本で撮りたかったのですが、主にニュージーランドでの撮影になりました。それと同時に日本にはもう、戦後の風景を撮れる場所があまり見あたりません。それも一つの理由でした。
―トミー・リー・ジョーンズさんやマシュー・フォックスさんクラスを呼ぶと、コストがかかる。ニュージーランドでセットを組み、撮影した方が経済的にも楽ということですね。
そうですね。ニュージーランドは「映画を是非我が国で作って下さい」という支援プログラムがあります。インセンティブというのですが、現地でお金をこれだけ使えば、一部返金してくれたり、税金が一部戻ってくるといったことです。国によっていろいろ支援形態がありますね。
―ところで、アメリカに仕事で滞在中などに、映画館で新作映画を観ることはありますか?
観ます。ロサンゼルスと行ったり来たりで、ロスにいる孫と一緒に観たいというのもあります。ふっと思い立って、夜に息子と一緒に行ったりします。大きい映画館で観るのが大事だと思います。
ロスにもシネコンはたくさんあって、気楽に行けます。各地にあります。映画が始まる前にポップコーンを食べて話をして…幸せな瞬間です。
―たとえが古くて恐縮ですが、アメリカで以前『ダイ・ハード2』('90)を観た時に、アメリカの観客は大騒ぎしていました。まだシネコンが誕生する前の前時代的な映画館でしたが。
そういう映画なんですよね。発散できますよね。快感になる。日本人はおとなしい。『終戦のエンペラー』は、アメリカでは笑いが出る。マッカーサーのシーンにもいろいろとおかしなところがあるんですね。自分を売り込んでみたり。マッカーサーはアメリカ人が良く知っているキャラだから、そこで笑うんですね。日本人は真面目だから、笑えないんですよね。
―さて、「イオンシネマ」は日本一の規模を誇るシネコンになりましたが、新しい映画館の取り組みや従来のシネコンになかったサービスなど、何か期待することはありますか?
そういった雰囲気とかは、人間が作るものですよね。サクラを入れてみるとか(笑)。「笑っていいんだ」と誘発するのはアリかと思います。「笑いたいんだけど、誰も笑わないから笑わない」というのもありますよね。私だったら「ハハハ」と笑うんですが。そういうのがあると「笑っていいんだ」と思うので、あるといいかもしれないですね。映画は楽しむためにできています。泣いたり、感動したり。映画は面白いと思います。米国ではポップコーンにしてみてもバターを大量に追加したりとか、あるんですよ。すごいんです。よくやるなと思います。
―確かに日本人は真面目ですよね。その一方で映画や映画館への距離感も、シネコンが登場する前と現在とで変質した気がしますが、映画人として何か感じることはありますか?
コンピューターやインターネットのせいなのか引っ込み思案だったりおとなしくなっていて外国にはあまり行かないというのも聞いています。
前はもっと、多くの学生が海外に留学していました。昨今はアグレッシブに挑戦していくより、「めんどくさい」という内向きな傾向があるようです。少なくとも映画館に足を運んで、映画で旅をすれば、人生のヒントがひらめきますよ。
もっともっと旅をしたり、映画館で映画を観たりするべきだと思います。